大阪府東大阪市大阪府と奈良県を分かつ生駒系の麓、急な斜面が穏やかに大阪平野へと変化する辺りで、古くからの集落と新しい住宅街が混在する地域に立つ4人家族のための住宅である。 前面道路も細く、周囲も混み合う周辺環境に対しては敢えて閉鎖的な外観を構成し1階に中庭を、そして2階には壁に囲われたウッドデッキテラスを設け、上空への抜けを確保する空間構成を採った。この2つの外部空間により、周辺からはプライバシーを確保しつつ、開口部を全開にして光と風を室内に取り込むことが可能になった。 また、コンパクトにまとめられた室内空間に広がりを補完する機能も果たしており、内外空間が一体となりながら、夫婦と二人の子供たちの生活を支えている。二つの外部空間はある意味で「抽象化された自然」であり、それらが常に傍にある日々の重なりは、家族の生活をより豊かなものにしてくれると信じている。 正面外観に現れる「家形」と中庭のアオダモの緑が透ける木製格子戸により、辛うじて住宅であることが認識される建築であるが、外周面に開口部が存在しなくても、地域社会や周辺環境と繋がる手段や方法がいくらでも存在する現代に於いては「物理的には家族を包みながらしっかりと守る」という安心感を与えることが住宅の一つの大きな役割であるのかもしれない。 建築家 岸下真理・和代 大阪府